ヘンデルの「メサイア」はICUにとって極めて記念すべき作品です。すなわち第1期生が入学した1953年のクリスマスに、「メサイア」最大の聴きどころである「ハレルヤ・コーラス」を歌おうということになり、音楽史を担当しておられたチャールズ・バークハート先生のピアノの伴奏で歌ったのが最初です。その演奏の録音が有線放送を通じて世界中に流されたということも記録に残すべき出来事でした。以後クリスマスには「ハレルヤ」というのが慣習となり、クリスマスの燭火礼拝で毎年歌われるようになりました。
1980年になって、ICU宗教音楽センター恒例のクリスマス音楽会にICUグリー・クラブが出演することになった時、「メサイア」の第1部と「ハレルヤ」を歌おうということになりました。このときの指揮は当時若者に人気が高かった小泉ひろしさんでしたが、アルト独唱はICU第4期生の近藤恭子さんでした。そして2001年4月1日、ついにICUの創学50周年を記念して、ICU祝祭合唱団と管弦楽団による「メサイア」全曲演奏が実現しました。指揮者は今回と同じく第1期生の長谷川朝雄さん、アルトは近藤さんでした。その時の成功を踏まえて再度この名曲の演奏を行うことになったのですが、前回同様指揮者ばかりでなく、独唱者4人のうち2人までがICUの卒業生という演奏です。ICUの音楽生活の豊かさを、今更ながら実感する今日この頃です。
金沢 正剛
ICU大学院教授、ICU宗教音楽センター所長
日本音楽学会会長、日本オルガン研究会会長